2021.7.11 第417回市川交響楽団「交響楽の午後」より>


プログラムノート                  かんばらひとし


 312日にウェビナー『音楽とSDGsってなに?』を聴講しました。市川交響楽団が所属する(公社)日本アマチュアオーケストラ

連盟の主催で、副題は「With コロナの時に考える、アマオケの皆さんが持っている力(モノ)ってなんでしょう。音楽で、皆さんで、

住み続けられるまちづくりを。」です。

SDGs(持続可能な開発目標)とは、人間社会と経済活動の持続可能性は地球環境に支えられていると考え、「貧困」「ジェンダー不

平等」「地域間不平等」「自然環境変動」「過度な消費行動」などを是正する世界の共通目標です。多くの皆さんが下記のポスター

をご覧になっていると思います。

目標5「ジェンダーの平等を実現しよう」に限らず、SDGs全体の理念として「誰一人取り残さない」という考え方があります。多様

な人材がお互いに認め合い、受け入れ合う機会と風土を作り出すことは、SDGsの目標達成において必須であると考えられています。

多様性の視点を持つことがSDGsを統合するひとつの軸となるということです。多様性は、人種・言語・ジェンダー以外にも、考え

方・観点・経験、仕事のレベル・スキル、信仰・年齢・身体的能力といったものも含まれるとされています。

 私はオーケストラほど「多様性」が早い時点で実現されている団体はないと思っています。アメリカのオーケストラでは早くから

カーテン越しのオーディションが行われ、結果多くの女性が採用されました。

 

伝統的なスタイルを持つウィーンフィルの現在の首席ファゴット奏者ソフィー・デルヴォーはフラ

ンス生まれの女性で、彼女の存在は大きな良い影響をオーケストラに与えています。

今年創立70周年を迎える我ら市川交響楽団でもいうまでもないことは、本日のステージをご覧いた

だければと思っています。アマチュアといえども今や自分たちのやりたいことをやるだけでは支持

は得られない時代です。多様性に限らず、アマチュアオーケストラにとってのSDGsを考えさせられ

た時間でした。

 

 

 

 




2020年のデータではSDGsの達成度ランキングでは1位スウェーデン、2位デンマーク、3位フィンランドと北欧が上位を占めてい

ます。(日本は先年から2つ順位を落とし17位、男女格差では120位)。その理由として北欧の高い教育水準と行き届いた社会福祉

が言われています。教育では、エコシステム、循環型経済といった良き消費者であることを義務教育から教わり、社会福祉が、行き

届いた行政サービスの充実が女性の就業率の高さをもたらしています。

 

 今日お届けするシベリウスと、ステンハンマルはともにほぼ同時代に生きた北欧の作曲家です。

シベリウスが生きたフィンランドは、12世紀からスウェーデン領下、19世紀にはロシアの圧制下にありました。その歴史的背景から

フィンランドは独立意識が高く、シベリウスは民族的題材にインスピレーションを得た作曲で、国家的英雄とされています 。彼のサ

ウンドは北欧の空気の色を感じさせます。

 

 シベリウスは新婚旅行でフィンランド人にとっては精神的な故郷ともいわれるカレリア地方に訪れ、そこ

の伝説や民謡に心打たれ作曲したのが歴史劇音楽『カレリア』です。今回はのちに出版された序曲と組曲を

お届けします。序曲Op.10は森と湖の国を象徴するフィンランドの原風景を思わせる部分と間奏曲で用いられ

るメロディでできています。

 組曲Op.11は、ホルンやトランペットのメロディが心地よい第1曲:間奏曲、吟遊詩人が歌う場面の第2曲:

バラード、爽やかな第3曲:行進曲風に、の3つの曲で構成されています。










スウェーデンは北欧最大の国で国土面積は日本とほとんど変わりませんが、人口は約1千万人で自然豊かな国です。
IKEAH&MVolvo、テトラパックなど世界的企業が多く生まれています。

 

 

ステンハンマルはドイツ留学を経てピアニストとしてデビューし、指揮者としてドイツ音楽への強い傾倒を示

し、作曲家としてもその作品はブラームスの影響を強く感じさせるものでした。その代表作が交響曲第1番で

したが、のちに友人のシベリウスらに触発され、徐々に独自の音楽世界を開拓していく上で自らそれを撤回し

ます。そして今回の交響曲第2番が生まれます。

一度聴いたら忘れられない3拍子の舞曲風旋律で始まる1楽章力強いアレグロ、2楽章アンダンテは哀愁

のある旋律が聞きどころです。第3楽章スケルツォはスウェーデンの民族舞曲を思わせます。もしかすると

ブラームスのハンガリー舞曲の影響もあるのかもしれません。中間部の木管楽器が聞きどころです。この交

響曲を締め括るのに相応しい4楽章は壮大なフーガによるフィナーレです。自らが撤回したドイツロマン派

の音楽を乗り越えたステンハンマルの信念の力強さを感じさせます。 了